キャリアと妊娠の葛藤。女性が直面する現実とそこからの再起

ライフコーチ蒼井櫻子さんのフォト03

岡–ニュートラルな視点を持つようになって、より柔軟で生徒中心のアプローチができるようになったんですね。その後櫻子さんは先生をやめて本格的にコーチングの道に進んでいますが、先生を辞めた理由は?

うん…それはね……。流産したことですね。

女性だっていうことをまざまざと確認させられる瞬間が多かったという話をしたと思うんですけど、結婚してようやくこれで周りから何も言われずに済むって思ったけど、妊娠したときにショックでショックでたまらなかったんですね。

そのときちょうどおもしろいプロジェクトがあって「新しいプロジェクトのメンバーに入らないか」って言われてて。

ようやく自分のキャリアが認められたって思ったんです。

けどそこで妊娠が分かって。

プロジェクトは何年かかかるものだったから妊娠したら年度の途中で抜けなきゃいけないし、10年以上かけてようやくここで認めてもらえたっていう時にそこに参加できない現実を受け止めきれなくて、今じゃないな(妊娠)って思っちゃった。

妊娠とキャリアの板挟み。そしてプロジェクトのチャンスと苦悩

でも全然嬉しくないなんて誰にも言えないですよね。

夫にも言えないし、そう思ってる自分のことも許せなかった。

唯一母親には言えたけど「そんなこと思うなんて。まずは流れに任せるしかない(妊娠したって流産の可能性とかもある)」って言われた。

母は喜んでいるような戸惑っているような感じだった。

まぁわたしが不安そうに喋るから、どう返事してあげたらいいか分からなかったかもしれない。

そのとき父と母と電話でしゃべったけど、もうなるように任せるしかないって。

そうなんだけどねってわかってるんだけど
「うーん…」って。

その頃ちょうど人事が変わる年度の切り替わりで、新しい人事になる発表直前というのもあって絶対に担任に入ってるぞってのもあるし、管理職にいって調整してもらって。

人事発表があったときに担任から外れてるから、みんながわかる。

みんな来るんですよ。わたしのところに。
「おめでたでしょ」って。
わたしの中ではおめでたくないんですよ。
でも「そうです」って。

ちょうどつわりが始まったときで、調子が悪くて悪くて。

みんな「無理しないで」って言ってくれたんですけど。

だけど年度が始まってすぐ流れちゃった。
流れちゃったというか、もう成長が止まってて。

そこから妊娠を喜べなかったこともそうだし、大きくさせてあげられなかったこともそうですし、女として落第したような感じでしたね。

流産と喜べなかったことへの自己嫌悪

それでうつ病をぶりかえしちゃったのはありましたね。

妊娠をちょっとでも前向きに考えたいと思って、夫と元々予定していた旅行に行ったんですね。

その時、子どもが生まれたらこんなとこ連れていけたらいいねとか、新幹線にのせるときにどうしたらいいのかなってそういう話しをしながらちょっとでも前向きになれるかなって自分に期待もしてたから、なんか。

罰だなって。

あかちゃんができたことを喜んであげられなかった天罰がくだったのかなって思ったりしました。

女性としてのプレッシャーと不平等

そのときにまた「私は女なんだ」っていうのを自分事として突き付けられた感じ。

男性だったら奥さんが妊娠したら「もっと仕事がんばらなきゃ」って言うんですよ。

だけど女性が妊娠したら「これからは家庭が優先だね」とか「健康第一だね」とか、まぁそれはもちろんそうなんですけど、子どものために生きろってなるんですよね。

それも…なんていうのかな。変。不公平。

みんなが無意識にもっている ”女性だからこうだよね” っていうので苦しむこともあるよねって初めて自分の中で顕在化した。

私みたいな働き方・考え方の人は子どもを産んでもきっとまた違う苦労をするし、産まなかった・産めなかったというので苦しいということも絶対あるし。

それをサポートしたいって思った。
休職中に起業だって思いましたね。

「同じ苦悩を抱える女性たちをサポートしたい」起業への道がスタートする

前から起業自体には興味あったんです。

私立だったから公立の先生より待遇は良いわけですよね。

大学院も出たから基本給も大卒よりちょっと高くて経済的にはすごく良かったけど、なんでこの人とわたしがお給料がおんなじなんだろうって思ったりすることもあった。

し、わたしのことをそう思ってる人もいただろうな。

自分がやってることをそのまま評価されてみたいなって思った。

それがその流産する4、5年前からいつかやってみようって思ってたんですけど。

今じゃない?って思ってた。

教師としてやってた頃から夢見てたというか、起業したらこれしてあれしてこんなこともやってみたいって酒の肴にしてたような感じですね。

実際に動き出したのは休職したとき。

実際自分でお仕事をはじめてみてわかったのは、ドアあけたらすぐ壁!!とか、壁崩したらまたすぐ壁!!!とか大変なことはたくさんあったけど、でもお金を払ってくださった方から直接いつも「ありがとう」と言ってもらえるし、その人自身の変化や成長をみられるのはすごくおもしろい。

教員のときはお金を払ってくださっている方(保護者)とは面談のときとかしかなかなかコミュニケーションとれなくて、表面的なわかりやすい行動に対して生徒から「ありがとう」と言ってもらうことはあったけど、コーチングを始めてわたしにお金を払ってくれて直接サポートしてる人から直接評価してもらえるのは、すごくチャレンジングだけど魅力的だなって思ってます。

コーチングを受けられている方は学校の先生がほとんどで、最初何回か無料でやるんだけど、有料に切り替わる方が多いですね。

職員室の独特の空気感とかは普通のコーチにはわからないからそこはありがたいと言っていただけますね。
学校の先生あるあるですね(笑)

だけど実際にはフリーランス方や専業主婦の方、会社員の方にもコーチングは受けてほしいと感じていて。

「あ、この悩みって先生特有のものかな?」 と思っていたのものがそんなことないと分かり始めたんですね。

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